2017.08.07

CLUB RED presents Professional Workshop vol.2 夢の講師陣に学ぶ次世代料理人塾 レポート

若き料理人の才能を発掘、育成し、次世代へとつなげるために活動するCLUB RED。今回で2回目となるワークショップには、豪華講師陣とゲストが次々に登場。CLUB REDのメンバーである若き料理人にとって、充実の一日となった。その様子をレポートする。

第1部

 

1限目 10:00〜10:50

基調講演:「若い料理人たちが今すべきこと」

講師:小山薫堂(放送作家/RED U-35 総合プロデューサー)、脇屋友詞(wakiya 一笑美茶樓/RED U-35 審査員長)

スペシャルゲスト:杉本敬三(Restaurant La FinS/2013年度RED EGG)、吉武広樹(Restaurant sola paris/2014年度RED EGG

今回のワークショップは、RED U-35の総合プロデューサーである小山薫堂氏と同審査委員長の脇屋友詞氏による基調講演でスタートした。テーマはずばり「若い料理人たちが今すべきこと」。脇屋氏によれば、「シェフや経営者の考え方に共感できる店で経験を積むことが大事」だと言う。そのためにも、「若いころは休みの日を無駄にせず、できるだけ多くの現場を見るべき」とアドバイス。それを受けた小山氏は、「休日に美術館に足を運ぶなどして、料理以外の“一流”にも触れてほしい。一流と二流の間のわずかの差は、料理以外の経験値から生まれる」と語った。

そこへ、スペシャルゲストとして、杉本敬三氏と吉武広樹氏が登場。杉本氏が「たとえば、タマネギのみじん切りを何秒でできるかなど、基本作業をどれだけ極められるか。その積み重ねが本物の技術を生む」と語れば、吉武氏は「一歩先を行くために、ほかの業界に触れそこで学んだことを、飲食業界に生かす方法を常に考えている」と語った。RED EGGを獲得した両氏の言葉は、おおいにCLUB REDメンバーの刺激になったようだ。

 

2限目 CLUB RED Pro.テスト&答え合わせショート講義

CLUB RED Pro.テスト〜知っておくと差がつく知識 10:50〜11:10

白熱のトークセッションに続いて実施されたのは“小テスト”。問題は計8問。ツイッターでつぶやくことを想定して、1限目の基調講演の感想を140文字以内にまとめよ、という筆記式が1問。残る7問は選択式で、コンパクトながら料理人が知っておくべき最先端の分野のものばかり。問題を解く、メンバーの表情は真剣そのもの。140文字の感想では、何度も書き直すメンバーの姿が目についた。

 

答え合わせショート講義 12:15〜14:15

続いて、選択問題の答え合わせをしながら行われるショート講義では、出題を担当した各分野の第一人者が講師として登場。答え合わせをしながら、最先端のトピックを、わかりやすく、コンパクトに語ってくれた。

 

Session 1 12:15〜12:35

「ワイン」〜オリジナルの復活

講師:田崎真也(ソムリエ)

問1 日本のぶどう品種「甲州種」の原産地は、次のうちどこか?

A)日本 B)グルジア C)モンゴル D)中国

答え D

 

長きにわたり、日本のワイン業界を牽引してきた田崎真也氏によれば、最先端の遺伝子研究などによって、ぶどう品種のルーツが明らかになりつつあるという。甲州種は、中国原産の品種にヨーロッパ品種が自然交配して生まれたものであるという、日本のぶどう品種の意外なルーツから、話はワインの世界的な潮流へ。20世紀以降のワインの歴史においては、ボルドー産やブルゴーニュ産が最高とされた1960年代を経て、70年代にはカリフォルニア・ワインがブレイクするなど、幾度かの大きな“地殻変動”が起きている。甲州産ワインが90年代に注目を集めるようになったのは、スペイン土着のワインづくりが再評価された流れを受けてのこと。このように現在、世界中のワイン生産地では、品種の選定や土着品種復活の動きが活発化しているという。料理人なら知っておくべき、「ワインのトレンドの変遷」を簡潔に伝える講義だった。

 

Session 2 12:35〜12:55

「空間」〜お料理を美味しく見せる光とは

講師:柏木章(株式会社アルフレックスジャパン 執行役員 リテイル統括部長)

問2 食卓で料理をもっとも美しく見せる「光源」は次のうちどれか?

A)ハロゲン電球 B)白熱電球 C)蛍光灯 D)LED

答え D

 

日本が誇るファニチャーブランド「アルフレックスジャパン」の柏木章氏によると、“光のクオリティー”の評価基準のひとつとなるのが、“太陽光にどれだけ近いか”だという。現在の技術で、太陽光に一番近いのは紫色のLEDとされているが、市場での主流は青色のLED。より高度な技術が求められる紫色のLEDが主流となるには、まだ時間がかかるようだ。柏木氏が蛍光灯と紫色のLEDでリンゴを照らすと、両者のちがいは明らか。参加メンバーにとっては、照明が料理の美しさに及ぼす影響を実感できるよい機会となった。

 

Session 3 12:55〜13:15

「哲学」〜ガストロノミーの世界基準

講師:生江史伸(レフェルヴェソンス)

問3 国際連合食糧農業機関(FAO)の推計によると、世界全体での1年間の食料廃棄量は、生産量の約3分の1に相当する約13億トン。環境省及び農林水産省が発表した食品ロスを含む食品廃棄物等の利用状.況等(平成26年度推計)によると、日本国内の1年間の食品廃棄物等は約2,775万トン。このうち、まだ食べられるのに捨てられている食品ロスは約621万トン。そんななか、オーストラリアのクローズド・ループ社が開発した、「レストランから排出された食品残渣(生ゴミ)を機械に通すと、微生物のはたらきによって有機土・堆肥にする」という処理機が話題である。この機械を取り入れている世界のガストロノミーレストランはどこか?

A)デンマーク・コペンハーゲンの北欧料理レストラン「Noma」 B)ブラジル・サンパウロのブラジル料理レストラン「D.O.M.」 C)いずれのレストランも取り入れている D)いずれのレストランも取り入れていない

答え C

 

常に最先端を意識して、レストランのあり方を考え続けてきたシェフ、生江史伸氏によれば、「今後、飲食業界を社会から必要とされる産業にしていくことが何よりも大事」だと言う。講義では、食品ロス問題を切り口に、そのためにできる実践例として、食品残渣を有機土・堆肥に変えるコンポストマシーンの導入例を紹介。マシンの電気代は1,600〜1,800円/月ほどだそうで、導入を検討する際の参考になったのではないだろうか。世界を知る生江氏らしいグローバルな視点からの講義に、参加者も意識を新たにしたようだ。

 

Session 4 13:15〜13:35

「味覚」〜味の科学〜おいしさをデザインするための基礎知識

講師:川崎寛也(味の素株式会社 食品研究開発センター)

問4 「うま味」について記載された以下の文のうち、正しいものを選びなさい。

A)うま味成分を、だし素材から抽出するには、熱した油が適している B)肉や魚に塩をすると、たんぱく質が分解されて、うま味成分が生じる C)うま味成分には、グルタミン酸ナトリウムしかない D)うま味成分は、だし素材や調味料だけでなく、食材にも含まれている

答え D

 

食品の官能特性を研究している川崎寛也氏は、「サイエンスでおいしさをデザインすること」を提唱した。氏によれば、デザインとは、「本質を見出して、意図的にコントロールすること」であり、サイエンスとは、「本質を見える化するための考え方・方法」だ。つまり、サイエンスでおいしさをデザインするとは、調理法を要素に分解して“見える化”し、それを再構築すること。換言すれば、味や香り、そしてその濃度などお客に感じさせる時間の長短……これらを科学的に見極め、意図的にコントロールすること、となる。こうした思考を身につけることが、お客が何を感じるかを考えて、本質的なソリューションを提案することにつながる。この講義は、若き料理人にとって、独創的な料理を考案するための大きなヒントになったはずだ。

 

Session 5 13:35〜13:55

「におい」〜香りを感じる嗅覚のしくみ

講師:東原和成(東京大学大学院 生物化学研究室)

問5 料理や食品から出てくる「香り」には何種類くらいの匂い物質が含まれているか?

A)数種類 B)数十種類 C)数百種類 D)数千種類

答え C

 

匂い研究の第一人者であり、東京大学大学院教授の東原和成氏によれば、匂い物質は、世界に数十万種類あるとされており、そのうち、料理や食品から出てくる「香り」に含まれるのは数百種類にもなるという。講義では、人間が香りを感じる体の仕組みを解説。意外だったのは、鼻先から入ってくる匂い(たち香=オルソネーザル)よりも、口や喉から鼻へと抜ける匂い(口中香、またはあと香=レトロネーザル)のほうが、料理の味を決定する上でとても重要だということ。また、 2つの経路から香りを楽しめるのは、人間だけだそうだ。料理における香りの重要性を改めて知る、貴重な講義だったのではないだろうか。

 

Session 6 13:55〜14:15

「土」〜土は活きている

講師:丸山訓(有限会社アグリクリエイト)

問6 土づくりに必要とされる「堆肥」。作成時に適当と思われる温度はどれか?

A)土壌温度に近い20度 B)体温より少し高い40度 C)牛乳の低温殺菌温に近い60度 D)温泉卵がつくりやすい80度

答え C

 

問7 大和芋類をすりおろしたときに触るとかゆくなる物質を少なくする秘訣はどれか?

A)水管理をしっかりする B)よい堆肥をしっかり入れる C)前作に緑肥を作る D)太陽養生処理を行う

答え A

 

最後に登場したのは、土壌分析や農産物の流通を手がけるアグリクリエイトの丸山訓氏。氏によると、堆肥づくりには、堆肥化をすすめる微生物の活性が最も高まる60度が適しているという。また、大和芋類のかゆみの原因となるシュウ酸カルシウムを少なくするためには、栽培時の水管理がとても重要だ。答え合わせをした後、丸山氏は、土の団粒構造の重要性を説いた。ふかふかの土に見られる土の粒、これが団粒構造だ。作物の育成には、保水性に富みつつ、排水性にも優れ、かつ通気性のよい土が求められるが、このいずれの性質も、この団粒構造を維持できてこそだという。団粒をつくるには、堆肥に含まれる微生物などの働きが不可欠。つまり、土にとっては大切なのは“化学”ではなく、“自然の力”。最高の食材を育む土の話は、料理人の視野を広げたはずだ。

 

 

3時限目 14:30〜17:30

調理実習

テーマ:世界に通用する日本のカレー

講義を終えたメンバーは、くじ引きによってチームを結成。10チーム対抗での料理対決に突入した。テーマは、3年後の東京オリンピックを見据えた「世界に通用する日本のカレー」。「“通用する”をどう解釈するかが、ポイント」という小山氏の言葉をヒントに、各チームは頭を悩ませた。さまざまな宗教の人びとが集う国際的な催しを想定して、肉を使わず野菜だけでのカレー、日本の伝統食をPRするために、味噌や漬け物、お茶、うどんなどを活かしたもの、スポーツなどを観戦しながらでも食べられるように、カレーをご飯で包んで揚げたものなど、自由な発想のカレーが出そろった。審査員は、小山薫堂氏、脇屋友詞氏、狐野扶実子氏(料理プロデューサー)、小宮山雄飛氏(ミュージシャン、カレー研究家)の4名。脇屋氏は、味だけでなく、原価と売値も厳しくチェックするなど、実際にお店で勝負できる「商品」になっているかどうかを重視。審査員の鋭い質問に参加者が戸惑う場面も見られた。すべての審査を終えると、料理人たちは、互いの健闘を称え合いながら、結果発表が行なわれる懇親会会場へと移動した。

 

 

第2部

懇親会 18:30〜20:30

懇親会は、RED U-35発起人であり株式会社ぐるなび代表取締役会長CEO・創業者、滝久雄会長の乾杯のあいさつでスタート。今年度審査委員を務める落合務氏(La BETTOLA)、昨年審査員を務めた山本征治氏(龍吟)も駆けつけ、参加メンバーを激励した。歓談タイムに入ると、参加メンバー同士互いに交流を深めるとともに、講師陣にも質問を繰り返す姿が見られた。

そしていよいよ料理対決の結果発表へ。優勝は「金山寺味噌カレー」にチャレンジしたGチーム。チームを代表して壇上に上がった薬師神陸氏(SUGALABO)が「味噌と漬け物をカレーに使うことで、日本の食材、食文化を見直すきっかけになれば」と、その狙いを語ったように、刻んだ漬け物と金山寺味噌の旨味がカレー風味と見事にマッチしていた。

また、RED CLUB Pro.テストの第1問目、基調講演の140文字感想文優秀賞は磯村悠介氏(Wa風本舗 おやぢの台所)が、最優秀賞には佐藤翔氏(赤坂 菊乃井)が輝いた。磯村氏が「自分を高めていくためにも人とのつながりは大事だと思っています。今日は刺激だらけの1日でした」と語れば、一方、佐藤氏は「今日は料理以外の話を聞けてとても勉強になりましたし、自分で考えることの大切さを実感できました」と語った。そのほかにも「今日の出会いを糧に個々が力を伸ばし、それが日本の料理界全体の底上げにつながれば」という声が多く聞かれるなど、料理界の未来を担うひとりであるという参加メンバーの自覚が垣間見えた。

PROJECTパートナー

ネスレ日本株式会社

ネスレ日本は、食で地域を活性化するというCLUB REDの趣旨に賛同し、「ネスカフェ」を通じてともに活動に取り組んでいます。

日本航空株式会社

アサヒビール株式会社

味の素株式会社

株式会社 アルフレックス ジャパン

エスビー食品株式会社

クロックス・ジャパン合同会社

首都圏食肉卸売業者協同組合

ユニ・チャーム株式会社

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